中小企業も狙われる!ランサムウェアとは?被害事例と企業ができる7つの対策
近年、企業や組織を狙ったサイバー攻撃が相次いでいます。なかでも「ランサムウェア」は、データの暗号化や情報の持ち出しによって金銭を要求する攻撃で、企業の規模を問わず被害が出ています。
この記事では、ランサムウェアの仕組み、国内の被害事例、感染経路、企業が取り組みたい7つの対策を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
01ランサムウェアとは?
ランサムウェアとは、パソコンやサーバー内のデータを暗号化するなどして使えなくし、復旧と引き換えに金銭を要求する不正プログラムです。「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた言葉で、「身代金要求型ウイルス」とも呼ばれます。
ランサムウェアの主な被害
感染すると、たとえば次のような問題が起こります。
- 顧客情報や請求書などのファイルが開けなくなる
- 社内システムが止まり、通常業務を続けられなくなる
- 重要な情報が外部に持ち出される
- 復旧や情報の非公開と引き換えに金銭を要求される

「データを盗んで脅す」攻撃にも注意
従来は、データを暗号化して復旧のための身代金を要求する手口が中心でした。現在は、事前に機密情報を盗み出し、「支払わなければ公開する」と脅す手口(二重恐喝)もあります。
データを暗号化せず、情報の公開をちらつかせて金銭を要求する攻撃も確認されています。バックアップがあっても、情報漏えいの問題まで解決できるとは限りません。

02なぜ中小企業も狙われるのか?
警察庁の公表資料によると、2025年に報告された国内のランサムウェア被害226件のうち、143件が中小企業でした。ランサムウェアは、大企業だけの問題ではありません。
2025年のランサムウェア被害
約63%が中小企業
警察庁の公表資料より(報告された被害226件のうち、中小企業143件)

中小企業が被害に遭う主な背景

ITの専任担当者がいない
機器の更新やセキュリティ設定の確認が、日々の業務に追われて後回しになりがちです。

古い機器やシステムを使い続けている
サポートが終了した製品には、修正されていない脆弱性が残ることがあります。

取引先とのつながりがある
大企業と取引する中小企業が侵害されると、取引先との接続が悪用されるおそれがあります。
規模ではなく、悪用できる弱点があるかどうかが狙われる分かれ目になります。
03実際に起きたランサムウェア被害
ランサムウェアの被害は、パソコンが使えなくなるだけではありません。受注や出荷など、事業そのものが止まることもあります。
国内事例アサヒグループホールディングスの被害(2025年9月)
2025年9月、アサヒグループホールディングスがサイバー攻撃によるシステム障害を公表しました。同社の調査では、攻撃者がネットワーク機器を経由して侵入し、複数のサーバーや一部のパソコン端末のデータがランサムウェアで暗号化されました。
受注・出荷などの業務に影響が出たほか、一部の情報流出も確認されています。

この事例が示すように、サイバー攻撃はIT部門だけでなく、事業の継続に直接関わる問題です。被害の規模や原因は企業ごとに異なりますが、中小企業でも、業務に欠かせないシステムが止まれば、売上や取引先との関係に大きな影響が出るおそれがあります。
04ランサムウェアの主な感染経路
侵入口を知っておくと、対策の優先順位をつけやすくなります。
1. VPNなどのネットワーク機器
社外から社内ネットワークへ接続するための機器です。脆弱性の放置や認証情報の盗難で、侵入口になることがあります。
2. リモートデスクトップ
離れた場所からパソコンを操作する仕組みです。インターネットから直接接続できる状態や、弱いパスワードは狙われやすくなります。
3. 不審なメールや添付ファイル
請求書などを装い、不正なファイルを開かせたり、偽のログインページへ誘導したりします。
4. ソフトウェアの脆弱性
OSやサーバーソフトの弱点を悪用されます。更新プログラムがあっても、長く適用していない環境は特に注意が必要です。
5. 盗まれたID・パスワード
他のサービスから流出したパスワードの使い回しや、フィッシングで盗まれた認証情報が悪用されます。
これらの経路は、複数の手口が組み合わされて攻撃されることもあります。
05感染すると企業に何が起きる?
被害は、データの暗号化や情報漏えいだけにとどまりません。
業務の停止

受発注や顧客管理のシステムが使えず、業務が止まることがあります。
顧客・取引先への影響

情報が流出すると、関係者への連絡や調査、報告が必要になります。
復旧費用の発生

調査や復旧、専門家への依頼などに費用がかかることがあります。
企業の信用への影響

情報漏えいや長期の業務停止は、顧客や取引先の信頼に影響します。
従業員への負担

手作業や問い合わせへの対応が増え、従業員の負担が大きくなります。
06企業が実施したい7つのランサムウェア対策
ランサムウェアを完全に防ぐ方法はありません。基本的な対策を組み合わせて、侵入や被害拡大のリスクを減らし、復旧しやすい環境を整えましょう。
- 01

OS・ソフトウェア・機器を最新の状態に保つ
Windows・macOS、業務ソフト、VPN機器の更新を適用します。サポートが終了した製品は交換を検討します。
- 02

多要素認証を導入する
パスワードに加えて認証アプリなどを使います。管理者やリモート接続のアカウントから優先して導入します。
- 03

バックアップを安全に保管する
定期的に取得し、通常のネットワークから切り離して保管します。実際に復元できるかも確認します。
- 04

不要なアクセス経路を閉じる
使っていないリモート接続やサービスを停止し、外部から接続できる範囲を絞ります。VPNの設定や権限も見直します。
- 05

ウイルス対策・端末監視を適切に運用する
パソコンやサーバーに導入し、警告の確認方法と、検出時の対応を決めておきます。
- 06

従業員への注意喚起と教育を行う
不審なメールや偽のログインページの手口を共有します。怪しいメールを受け取ったときの相談先も決めておきます。
- 07

被害発生時の対応手順を準備する
連絡先、システムの停止判断、バックアップからの復旧手順を整理します。最低限の緊急連絡体制も用意します。
07ランサムウェアに感染したら?初動対応のポイント
感染が疑われたら、慌てて操作を続けず、被害の拡大を防ぐことを優先します。次の手順で対応しましょう。
- 1

担当者へ連絡する
社内の責任者へすぐ報告します。
- 2

拡大を防ぐ
疑わしい端末をネットワークから切り離します。
- 3

記録・確認する
発生時刻、警告、影響範囲を記録します。
- 4

専門機関へ相談する
警察、JPCERT/CC、専門企業に相談します。
- 5

安全性を確認して復旧する
原因を調べ、侵入経路を塞いでから、安全なバックアップで復旧します。
調査に必要な情報が消えないよう、感染が疑われる端末は初期化や再インストールをせず、専門家の指示を待ちます。原因が残ったまま復旧すると再び被害を受けるおそれがあるため、復旧は原因の調査と侵入経路の封鎖が済んでから行います。
身代金の支払いは慎重に
身代金を支払っても、データが戻る保証や、盗まれた情報が削除される保証はありません。要求に応じる前に、必ず専門機関へ相談しましょう。

08よくある質問
よくいただく質問をまとめました。
Q小さな会社でもランサムウェアの標的になりますか?
Aはい。企業の規模に関係なく被害が出ています。警察庁の2025年の統計では、報告された被害の約63%を中小企業が占めました。
Qウイルス対策ソフトを入れていれば安心ですか?
Aいいえ、それだけでは十分とはいえません。ソフトウェアの更新、多要素認証、バックアップ、アクセス管理などを組み合わせる必要があります。
Qバックアップがあれば被害は防げますか?
Aいいえ、バックアップは感染や情報漏えいそのものを防ぐものではありません。バックアップ自体も攻撃されることがあるため、安全な保管と復元テストが必要です。
Q身代金を支払えばデータは戻りますか?
Aいいえ、支払ってもデータが戻る保証はありません。情報の流出や再攻撃のおそれも残るため、要求に応じる前に専門機関へ相談してください。
QWebサイトのセキュリティ対策も必要ですか?
Aはい。Webサイトやその管理システムにも、更新とアクセス管理が必要です。ただし、社内ネットワーク全体のランサムウェア対策とは別のもので、Webサイトを守るだけで企業全体の被害を防げるわけではありません。
09まとめ|ランサムウェア対策は日頃の備えが重要
ランサムウェアは、中小企業にとっても身近なサイバーリスクです。被害が出ると、データが使えなくなるだけでなく、業務停止や復旧費用、信用への影響も生じます。
被害が出てから考えるのではなく、日頃から備えておくことが大切です。ソフトウェアの更新、多要素認証、バックアップ、アクセス管理を、一つずつ確認しましょう。
Webサイトの安全性の確認や改善も、企業のセキュリティ対策の一歩になります。
